AIで子どもの教材を作る前に|わが家が見つけた6つの見落としと品質チェック
AIで作った学習ソングには、大事な条件の抜け、音でしか気づけない読み間違い、もっともらしい造語が混ざっていました。共働きで時間がない中でも、子どもに渡す前にここだけは見ておきたい、というポイントを実例からまとめます。
目次
AIで子どもの教材を作るとき、「どこまで確認すればいいのかな」と迷いますよね。
わが家でも、子どもと一緒に聴く学習ソングを作っている中で、歌詞・音源・確認問題のそれぞれに見落としがありました。数えてみると6つです。
結論から言うと、AIは教材の「下書きづくり」にはとても便利です。 ただ、子どもに渡す前の最後の確認だけは、やっぱり親の目が要るのだなと感じています。
共働きで、平日にまとまった時間を取るのは難しい。それでも「ここだけは見ておこう」と決めたポイントを、実際の失敗とセットでまとめました。
見落としは、大きく4つのタイプに分かれました。
- パッと見では気づきにくい、大事な条件の抜け
- 文字だけでは分からない、音の読み間違い
- 内容は正しいのに、確かめる問題がない
- AIのアドバイスを、そのまま使えない場面
完璧な教材を作るためのルールではありません。「これなら仕事から帰ってからでも見られるな」という範囲に絞っています。
この記事で言う「教材」は、3つセットのことです
先に、言葉の整理をさせてください。わが家で作っているものは、3つで1セットです。
| 呼び方 | 中身 | 役割 |
|---|---|---|
| 歌 | 学習ソングの歌詞と、その音源 | 覚える |
| 解説(歌の設計図) | 歌と一緒に作る「この曲で覚えられること」の数行 | 何を覚える歌かを示す |
| 確認問題 | 復習アプリ「まなびの森」に入れている問題 | 覚えたかを確かめる |
このあと出てくる見落としは、この3つのどこで起きたかが毎回違います。 「歌は間違っていたけれど、解説と確認問題は正しかった」というように、そろっていないことが問題でした。
記事の中では、まとめて指すときだけ「教材」と書き、それ以外は歌・解説・確認問題と呼び分けます。
なお、このあと出てくる歌はYouTubeに置いてあるので、記事の中でそのまま聴けます。 公開しているのは、どれも間違いを直したあとの音源です。「こう直しました」と書いた結果を、耳で確かめていただけます。
わが家がどのAIに何を任せているか
先に、登場するAIを整理しておきます。1つのAIに全部やらせるのではなく、役割を分けています。
| 役割 | 使っているAI |
|---|---|
| 歌詞の下書きを作る | Codex(OpenAI) |
| 事実の確認と修正 | Claude(Anthropic) |
| 歌詞から音源を作る | SUNO |
| 念のための第三者チェック | Gemini(Google) |
このあと出てくる見落としは、どれか1つのAIが特別に苦手というより、どのAIにも起こりうる種類のものでした。
歌・解説・確認問題のうち、1か所だけが間違っていた
いちばんヒヤッとしたのは、全体が間違っていたわけではないことでした。 合っている部分が多いからこそ、たった1か所のずれを見落としそうになりました。
見落とし① 拒否権の歌詞から「常任理事国」が抜けていた
国連のしくみを覚える歌で、Codexが書いた歌詞が「ひとつの国がだめと言えば」となっていました。
でも、拒否権を持っているのは安全保障理事会の常任理事国だけです。 歌詞を短くまとめる過程で、「常任理事国」という条件が落ちていました。
音の数を減らして歌いやすくしたつもりでも、条件がひとつ消えると、まるごと別の事実になってしまいます。
しかも、そこはサビでくり返される場所でした。 口ずさみやすい場所だからこそ、間違えたまま覚えてしまったら大変だ、と焦りました。
このとき不思議だったこと
同じCodexが、同じ資料の中に書いた解説には「常任理事国」と正しく書かれていたのです。次女が使っている復習アプリ「まなびの森」の確認問題も、正しいままでした。 間違っていたのは、歌詞だけでした。
解説は、いわば歌の設計図です。自分で書いた設計図のとおりに、自分で作れていなかったことになります。
同じAIが、同じ資料の中で、片方は正しく書き、片方で条件を落とす。 「このAIは信用できる/できない」という見方では、防げない種類の誤りでした。
3つを「これは正しい」「これは間違い」とまとめて判断するのは危ない、と気づきました。 歌・解説・確認問題は、同じ内容を伝えていても、ひとつずつ見比べる必要があります。
直す場所も、歌詞だけでは終わりませんでした
修正するときは、元の歌詞・アプリに表示する歌詞・SUNOで作り直す音源の3か所をそろえました。 文字を直しても、すでにできあがった音源は古い歌詞のまま歌い続けるからです。
歌は、子どもが実際に聴く音源になって初めて「直った」と言えます。画面の文字を見ただけで安心してはいけないな、と学びました。
直したあとの歌が、こちらです。サビで「常任理事国」と歌っているのが聴けます。
Music by Suno AI
文字で合っていても、音で聴いてみないと分からない
AIが作ったものは、テキストを読んだだけで確認を終えられません。 実際に読まれ、歌われ、画面に映る形まで見ないと気づけないことがありました。
見落とし② 「食塩」と書いてあるのに「しょくしお」と歌われた
理科の曲で、歌詞のテキストにはきちんと「食塩」と書いてありました。 ところが、SUNOで作った音源を聴いてみると「しょくしお」と歌っていたのです。
気づいたのは、作業デスクで、パソコンの画面に歌詞を表示しながら音源を流していたときでした。 目で歌詞を追いながら耳で聴いていたから、「いま違うことを歌ったな」と引っかかったのだと思います。
歌詞のファイルだけを読んでいたら、絶対に気づけませんでした。 しかもサビでくり返す言葉だったので、歌詞をひらがなに書き直して、音源を作り直しました。
歌をつくるなら、最後は自分の耳で聴くところまでが確認です。 そのとき、歌詞を目で追いながら聴くと、ずれた瞬間に気づけます。ここはAIに任せられない部分でした。
作り直したあとの歌です。「しょくえん」と歌えています。
Music by Suno AI
見落とし③ もっともらしい造語が混ざっていた
滑車の曲では、Codexが「力のぶんけつ」という、存在しない言い方を混ぜていました。
「分蘖(ぶんけつ)」は稲の成長に関わる言葉で、理科の「力」の話には使いません。 それらしく聞こえるので、知らなければそのまま通してしまいそうでした。ここはClaudeとの確認作業で見つけて、「ちからを わける」に直しています。
直したあとの歌です。
Music by Suno AI
見落とし④ 「ひらがなで」と指示したのに、漢字が残った
Codexに「ひらがな版で作ってください」と指示したのに、曲4と曲5では漢字が残っていました。2曲続けてです。
指示を書いたから守られている、とは限りません。 できあがったものを、指示どおりかどうか見直す。それも親の側の仕事でした。
歌が正しくても、確認問題がなければ学びが閉じません
歌詞の内容が合っているだけでは、学習の道具としてはまだ足りませんでした。
見落とし⑤ 覚えた内容を試す問題が用意できていなかった
日本の資源をテーマにした曲に、原油の輸入先としてサウジアラビア、石炭の輸入先としてオーストラリアが出てきます。
歌詞の内容自体は合っていました。ところが、まなびの森の確認問題を調べてみると、その内容を確かめる問題が1問も入っていなかったのです。
わが家では、歌で覚えて、問題で確かめる、という流れで使っています。

画面はこんな形です。曲を聴いたあと、そのまま「この流れを問題で確かめる」に進めるようにしています。 歌だけがあっても、覚えたかどうかを試す場所がなければ、学びが閉じません。
そこで問題を4問追加して、歌と練習をつなぎ直しました。原油の輸入先、石炭の輸入先、発電の割合、日本の位置の4つです。
別のAIのアドバイスも、わが家の目的に合わせて選びました
内容のチェックのために、Gemini にも意見を聞くことがあります。 ただ、返ってきた直し方をそのまま採用すればいい、というわけでもありませんでした。
見落とし⑥ 正しい指摘でも、使う言葉が歌に合わなかった
拒否権の誤りは、Gemini も同じように見つけてくれました。ありがたかったです。 ただ、提案された直し方は「強国のひとつの国が」でした。
「強国」は、中学受験の問題では使わない言葉です。
歌詞は、なんとなく正しそうな言い換えよりも、実際のテストや確認問題で使う言葉にそろえたい。 AIのアドバイスを採用するかどうかも、最後は親が決める部分でした。
歌・解説・確認問題をそろえるためのチェックリスト
わが家の失敗から、子どもに渡す前に確認したいことを5つに絞りました。
- 元の資料と、歌詞の主語・条件・数字を見比べる
- 歌・解説・確認問題の3つを、ひとつずつ見比べる
- 直したら、子どもが実際に聴く音源・見る画面で確かめる(歌なら、歌詞を目で追いながら聴く)
- 歌で覚えた内容に、対応する確認問題があるかを見る
- AIからの提案も、テストや確認問題で使う言葉に合っているかを親が決める
これで100%防げるとは言えません。 それでも、AIが作ったものをそのまま子どもに渡さないための、立ち止まる場所にはなると思っています。
まとめ:AIは優秀な相棒。最後の確認だけは親の側に残しておく
AIを使うと、下書きづくりや形にする作業は驚くほど早くなりました。 一方で、条件が抜ける、音が違う、問題につながらないといった穴は、実際に使う場面まで見ないと気づけませんでした。
少し手をかけてでも家庭学習の道具を作ってみたい、という方には、AIはとても心強い相棒になります。 反対に、どうしても確認する時間が取れないときは、AIが作ったものをそのまま子どもに渡さないほうが安心です。
AIに作業を任せることと、確認まで手放してしまうことは別でした。 子どもに渡す前の「これで大丈夫かな」という最後の一歩だけは、親の側に残しておきたいなと思っています。